バラと生ごみ~「無分別知」の話

最近、マインドフルネスの著書を多数執筆している僧侶・学者・詩人の
ティク・ナット・ハン師の著書を私なりに少しずつ
読んでいるのですが、

読めば読むほど、とても面白い

です。読んだあと、世界がぜんぜん違った景色に見えたりします。
一部引用させていただきます。

「汚れているのか、無垢なのか」「きたないのか、清いのか」どれも私たちが心の中で作り上げた概念です。花瓶にさした美しいバラを見ると、無垢だと思います。バラの香りは清らかですがすがすがしいものです。それは清らかという概念を裏切りません。その反対にあるのがゴミ箱です。ひどい臭いで、腐ったものであふれかえっています。これは汚れていると見なします。けれども、汚れていることと清らかであることの概念をよくよく観ていくと、そこにはインタービーイングの洞察に触れられるチャンスがあります。

バラは五、六日もすれば生ゴミの一部になります。五日も待たなくても、それはわかります。バラを深く観ていきさえすれば、まさに今そのことがわかります。そしてゴミ箱の中を観るならば、数か月後には、その中身はバラに変わっていくのが見てとれるでしょう。

あなたが腕の良い有機栽培の園芸家で、菩薩の眼をもっている人ならば、バラを見ればそこに生ゴミを見てとり、生ゴミを見ればそこにバラを見抜くことができるでしょう。

『ティク・ナット・ハンの般若心経』馬籠久美子訳 より

インタービーイングというのは、ティク・ナット・ハン師が1980年代に作った言葉で、inter(共に)+be(存在する)という意味の動詞形。
日本語で「相互存在」と訳されています。

よくよく考えれば、当たり前のことなんですよね。
仏教ですけど、宗教独特の考え方という感じもないですし、
科学的な事実だと思います。

私たちの意識が、赤ちゃんの時代からあらゆることを
これは汚い、これは綺麗、
これは短い、これは長い、
これは悲しい、これは嬉しい、
これは良い、これは悪い
と分けて、分けて、分けて、分けてきた結果
本来ひとつであったものが分からなくなっている。

今日遊びに来た2歳の女の子は、大きな蜘蛛をわしづかみにしようとしていましたよ(笑)
蜘蛛=触らないもの、バッタ=触っていいもの
という分け方は、彼女はしていないんだなと感心しました。

そのように世界を見つめてみると、世の中がとても不思議な様相を帯びてくることがあります。

ところで、先日、まったく同じ話をzoomで聞きました。
保育雑誌「エデュカーレ」の編集長をしてらっしゃる東大名誉教授・汐見稔幸先生の
「SDGsとインクルージョンー自然保育の可能性を考えるもう一つの可能性」
という講演会のなかででした。

「分かる」というのは「分ける」から来ている。
物事を分けて、分けて、分けて、他の人にはわからないような
違いが分かるようになるのが「プロ」。
それを「分別知」と言う。
けれど、あまりに分けすぎると、今度はもともと一つだよね、同じだよね、
ということを忘れてしまう。動物も植物もみな地球の仲間、生きている。
このみんな仲間にしていく力、「無分別知」が、この先
とても大事になってくる。森での保育はその力を育んでいくだろう。

というような話で、とても感動しました。2回も見ちゃいました。

汐見先生がもうひとつ強調しておられたのは、
(ここはヨガティーチャー、よく聞いておきたいところです)

自分の中の自然を感じ、外の自然と内的な自然が上手に対話する力を育てることはとても大事。
そういう人間は決して、自然や環境を粗末にしたりしないだろう。

ということでした。

これは、まさにヨガで育てたい、
育てられる力なのですよね。

たとえばヨガでは「月」のサイクルをよく意識しますが、
それは単にスピリチュアルの象徴として月や天体を採用してる訳ではなく、


満月の日は、頭痛がする、気持ちが昂る、生理がくる、むくむ

など、内なる自然と外なる自然の共鳴に気づくことを、大切にしているからです。
アーユルヴェーダの智恵などはまさにそれですが、
春、夏、秋、冬のサイクルや、
一日のうちの時間(朝昼夜)、人生のうちの時間(年齢)、など、自然としての人間と、地球の繋がりを
体感的に理解するのに本当に役立ちます。

わたしたちのからだも、そらも、やまも、うみも、もともとおなじだったね。
無分別知。
わたしのなかでも今、日々とても育てたいと思っていることです。
無分別知の先輩である子どもたちに学びながら、分別のある大人としてどう言葉を選ぶのか。
この人生の後半、チャレンジしたいと思います。

読んでくださって、ありがとうございました^^

追記:
9月6日、自然の中で行う子ども向けマインドフルネスの実技講習をなんと
御代田町のやまゆり公園で行うことになりました!
3名以上で催行します。よろしければご一緒にいかがでしょうか?
講師は「子どもたちへヨガを伝える会ながの」代表の山口有佐先生です。

オンライン講義8/24&実技@長野 9/6 森林Be-ingモードサポーター講座